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相続放棄の手続き完全ガイド|家庭裁判所への申述から注意点まで解

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相続放棄の手続き完全ガイド|家庭裁判所への申述から注意点まで解

「親の借金まで相続しないといけないの…?」

「財産があると思ったら、実は負債のほうが多かった…」

相続という言葉からは“財産を受け取る”イメージを持たれる方が多いかもしれません。しかし、実際には「借金や負債」も相続の対象になります。

そんなとき、自分や家族を守るために選択できる手段が「相続放棄」です。

相続放棄は、家庭裁判所への申立てによって正式に“相続しない”と宣言する手続きのことです。

単に「いらない」と言えば済むわけではありません。申立てする場所、期限や必要書類、正確な流れを把握しておくことが重要になります。

この記事では、

  • 相続放棄の基本的な仕組み
  • どんなときに必要なのか
  • 手続きの流れと注意点

について、初心者にもわかりやすく丁寧に解説していきます。不安を取り除き、正しい判断ができるようサポートいたします。

相続放棄の基礎知識

相続と聞くと、「財産を受け取ること」と考える方が多いかもしれません。

しかし、実際には「財産」だけでなく、「借金」などの負債も相続の対象です。そのため、不要なトラブルや損失を避けるために、相続放棄という選択肢が重要になってきます。

ここでは、相続放棄の基本的な内容について。そして、知っておくべきメリット・デメリットについて詳しく解説します。

相続放棄とは何か?

相続放棄とは、「相続人が一切の相続権を放棄する」手続きのことです。家庭裁判所に対して申述(申し立て)を行うことで、はじめて法的に有効となります。

この放棄が認められると、最初から相続人でなかったものとみなされるのが大きな特徴です。つまり、プラスの財産もマイナスの財産(借金など)も、一切受け取らないことになります。

たとえば、親が多額の借金を抱えたまま亡くなった場合、「相続放棄」をすることで、その借金を引き継がずに済むのです。

ただし、この申述には原則として「被相続人が亡くなったことを知ってから3か月以内」という期限があるため、早めの判断と行動が求められます。

相続放棄のメリットとデメリット

メリット

  • 借金などのマイナス財産を相続しなくて済む
    • 万が一、故人が大きな負債を抱えていた場合でも、相続放棄をすれば責任を負わずに済みます。
  • 相続トラブルを避けやすい
    • 相続人が多数いる場合に、「関わりたくない」「争いに巻き込まれたくない」といった場合の選択肢にもなります。
  • 相続人の範囲が変わることで、次順位の相続人に権利が移る
    • たとえば子が放棄した場合、次に親や兄弟が相続人になります。負担を分けたり、特定の人に任せることも可能です。

デメリット

  • プラスの財産も一切受け取れない
    • たとえ不動産や現金などが残っていても、相続放棄をすればそれらもすべて放棄することになります。
  • 一度放棄すると撤回できない
    • 原則として、相続放棄の申述が受理された後は、取り消しができません。感情的に判断して後悔するケースもあるため、慎重な判断が必要です。
  • 他の相続人との関係に影響が出る場合も
    • 放棄によって他の相続人に多くの財産や負担が集中することになり、人間関係の摩擦につながる可能性もあります。

相続放棄は、非常に有効な手段である一方で、「何を手放し、何が残るのか」を明確に理解したうえで行う必要がある選択です。

相続放棄の手続きの流れ

単に「放棄したい」と言うだけでは完了しないのが相続放棄の難しいところです。法的な効力を持たせるためには、家庭裁判所に対して適切な手続きを行う必要があります。

ここでは、相続放棄をスムーズに進めるための段階的な流れについて。そして、必要となる書類の内容と取得方法をわかりやすく解説します。

相続放棄の手続きのステップ

  1. 相続が発生したことを確認する
    • 被相続人(亡くなった方)の死亡日を起点に、手続きの期限(原則3か月)がスタートします。
  2. 財産の内容を確認する
    • プラスの財産(預貯金・不動産など)とマイナスの財産(借金・保証債務など)を把握しましょう。
    • 状況によっては専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
  3. 家庭裁判所に申述書を提出する
    • 故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出します。
  4. 必要書類を添えて申し立てる
    • 申述書に加えて、戸籍謄本などの書類を一緒に提出する必要があります。
  5. 家庭裁判所からの照会書に回答する
    • 申述後、裁判所から「照会書」が届きます。これは放棄の意思確認のための書類で記入して返送することで手続きが進みます。
  6. 相続放棄が受理されると「受理通知書」が届く
    • 手続きに不備がなければ、正式に「相続放棄」が成立し、家庭裁判所から通知が届きます。

必要書類とその入手方法

相続放棄の申述には、以下の書類が必要です。

  • 相続放棄申述書
    • 家庭裁判所の窓口またはウェブサイトで入手できます。書式に沿って必要事項を記載します。
  • 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)
    • 市区町村の役所で請求できます。複数の戸籍にまたがる場合もあるため、時間に余裕を持って取り寄せましょう。
  • 申述人(相続放棄する本人)の戸籍謄本
    • 現在の本籍地がある市区町村で取得可能です。
  • 収入印紙(申述人1人につき800円)と郵便切手
    • 郵便切手の金額は裁判所によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

改めてポイントを整理しましょう。

  • 申述書類の記入や収集には、時間と手間がかかります。
  • 被相続人の財産調査と並行して進めるのがスムーズです。
  • 不明点が多い場合は、司法書士や弁護士への相談も検討しましょう。

家庭裁判所への申述手続き

相続放棄を正式に成立させるためには、家庭裁判所に対して「相続放棄の申述」を行う必要があります。ここでは、どこの家庭裁判所に申述すればいいのか。そして申述書提出後の流れや対応方法について詳しく解説します。

申述先の家庭裁判所の選定

相続放棄の申述を行う際は、被相続人(亡くなった方)の「最後の住所地」を管轄する家庭裁判所が手続きの窓口になります。

相続人自身の住所地ではないため、注意が必要です。

管轄裁判所の調べ方

  • 裁判所の公式ホームページ(https://www.courts.go.jp/にある「裁判所の管轄区域」から検索可能です。
  • 市区町村名を入力すれば、該当の家庭裁判所が表示されます。
  • 迷った場合は、最寄りの家庭裁判所に電話で確認するのも確実です。

例えば、被相続人が「東京都世田谷区」に住んでいた場合、管轄は「東京家庭裁判所 世田谷出張所」になります。このように、被相続人の住所地によって裁判所が決まるため、正確な情報を事前に把握しましょう。

申述書の提出と照会書への対応

相続放棄申述書の提出方法

家庭裁判所に提出する申述書は、以下の方法で対応します。

  • 持参または郵送で提出可能(郵送の場合は書留やレターパックなど記録が残る方法がおすすめ)
  • 書類一式を揃えて提出する(提出書類の不備があると、手続きが遅れることがあります)

提出書類の例

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)
  • 申述人の戸籍謄本
  • 収入印紙(800円分)と郵便切手(家庭裁判所によって異なる)

照会書への対応

申述書の受理後、裁判所から「照会書」という確認書類が届きます。これは「本当に相続放棄の意思があるか?」を確認するためのものです。

  • 内容例:
    • なぜ相続放棄を希望するのか
    • 他の相続人との関係性
    • すでに相続財産を使用していないか 等
  • 回答のポイント:
    • 素直に事実を記入
    • 書き間違いがないよう丁寧に対応
    • 指定された期限内に返送すること

照会書への返答が適切に行われると、数週間程度で「相続放棄申述受理通知書」が届き、手続きが正式に完了します。

ポイントまとめ

  • 申述は被相続人の住所地の家庭裁判所へ
  • 書類提出後は、照会書に正確かつ丁寧に回答する
  • 不備や遅れがあると放棄が無効になる可能性もあるため注意が必要です。

次のセクションでは「相続放棄の期限と例外的な救済措置」について解説していきます。タイムリミットを過ぎると放棄が認められないケースもあるため、早めの行動が重要です。

相続放棄の注意点とよくある質問

相続放棄は一度手続きを終えると原則として撤回できないため、慎重な判断が求められます。

ここでは、「熟慮期間」と呼ばれる申述の期限、そして放棄後に生じる影響とその対処方法について解説します。


熟慮期間とその延長の可能性

相続放棄には、法律で定められた明確な期限が存在します。これを「熟慮期間」と呼びます。

熟慮期間とは?

  • 相続人が自己のために相続があったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ申述しなければなりません。
  • この「知った日」は、死亡の事実を把握し、なおかつ自分が相続人であることを知った時点を指します。

例えば、疎遠だった親戚の死亡を1か月後に知った場合は、その知った日から3か月以内が申述期限となります。

延長はできる?

原則、3か月を過ぎると相続放棄はできません。しかし、一定の事情がある場合に限り「熟慮期間の伸長申立て」が認められることがあります。

「熟慮期間の伸長申立て」が認められることがあるケースは次の通りです。

  • 財産の状況がすぐに把握できない場合
  • 遺産の存在が後から明らかになった場合

この申立ても家庭裁判所で行い、認められれば期限が延びます。ただし、早めの対応が必須なのは言うまでもありません。

相続放棄後の影響と対応策

相続放棄を行うことで、自分自身は相続人でなくなりますが、それによって他の人に影響が及ぶケースもあります。

他の相続人に与える影響

  • 相続放棄により、自分以外の相続人の相続分が増加します(法定相続順位に応じて)。
  • たとえば、長男が相続放棄した場合、次男や母親に相続権が移ります。
  • 相続人がいなくなると「国庫に帰属」する場合もあります。

債権者との関係

相続放棄によって、債務も含めてすべての権利義務を放棄できます。ただし、放棄したことを知らない債権者から請求されることもあります。

  • 相続放棄の証明として「相続放棄申述受理通知書」を提示しましょう。
  • 自分の子などに相続が回る場合(代襲相続)にも注意が必要です。

相続人の順番に注意

  • 第一順位(子)が放棄 → 第二順位(親)に相続権が移行
  • 親も放棄 → 第三順位(兄弟姉妹)へ
  • 全員放棄 → 財産は国庫へ

自分が放棄しても、他の家族に迷惑がかかる可能性があるため、事前の話し合いと情報共有が大切です。

ポイントまとめ

  • 相続放棄の期限は「知った日から3か月」
  • 特別な事情があれば期限の延長申立ても可能
  • 放棄後の影響は他の相続人や債権者にも及ぶため慎重に判断
  • 手続き前に専門家に相談することが安心への第一歩

専門家への相談のすすめ

相続放棄の手続きは、自分でも可能ですが、法的な知識や判断が求められる場面が多いため、専門家への相談を検討することが非常に有効です。

ここでは、専門家に相談するメリットと、相談先の選び方・費用について詳しく解説します。

専門家に相談するメリット

相続放棄をスムーズかつ正確に進めるうえで、法律の専門家のサポートは非常に心強い存在です。

手続きの不備を防げる

  • 家庭裁判所へ提出する「相続放棄申述書」は、書き方を間違えると受理されない可能性があります。
  • 専門家であれば、正確な書類作成と添付書類の確認を行ってくれるため、手戻りや失敗のリスクを軽減できます。

熟慮期間内に確実に対応できる

  • 自力で手続きを進めていると、3か月という期限内に完了できないこともあります。
  • 専門家なら、スケジュール管理や裁判所とのやり取りも代行してくれるため、期限切れの不安が減ります。

状況に応じた最適なアドバイスが得られる

  • 相続人が多数いる場合や、財産の有無が不明確な場合、どう判断するべきか迷うことも。
  • 弁護士や司法書士であれば、家族全体の状況を見据えた判断材料を提供してくれます。

相談先の選び方と費用の目安

相続放棄に対応している専門家には、主に以下のような選択肢があります。それぞれの特徴を把握し、自分の状況に合った相談先を選びましょう。

主な相談先と特徴

専門家対応範囲特徴
弁護士相続放棄だけでなく、他の相続人との交渉・債務整理も対応可能法的トラブルや複雑な相続に強い
司法書士相続放棄の申述書作成・提出代理が可能比較的費用が抑えられ、シンプルなケースに適している
行政書士書類作成のサポートのみ(提出代理は不可)手手続き内容を自分で進める前提での補助

費用の目安

専門家相場(1名あたり)
弁護士5〜10万円前後(相談料別途)
司法書士2〜5万円前後
行政書士1〜3万円前後(書類作成のみ)

※地域・対応内容・相続の複雑さによって変動します。
※複数名分を一括で依頼することで割安になることもあります。

ポイントまとめ

  • 相続放棄に不安がある場合は迷わず専門家へ相談を。
  • 弁護士は複雑なケースに強く、司法書士は手続き重視の場面に適している。
  • 費用とサポート内容を比較して、自分に合った相談先を選ぶことが大切です。

相続放棄は人生の中で何度も経験することではありません。だからこそ、経験豊富な専門家の力を借りて、正しく安心して手続きを進めていきましょう。

相続放棄を正しく理解し、適切に対応するために

相続放棄は、被相続人の債務から逃れるための有効な手段である一方で、申述期限・必要書類・手続きの流れなど、法的なルールに沿って正確に進める必要がある手続きです。

誤った判断や対応の遅れは、かえってトラブルや負担を招くことにもなりかねません。

今回ご紹介したように、

  • 相続放棄の意味とメリット・デメリットを正しく理解すること
  • 家庭裁判所での申述の流れや必要書類を把握しておくこと
  • 迷ったら早めに専門家へ相談すること

これらがスムーズな対応への第一歩です。

自分や家族を守るための“選択”として、相続放棄を前向きに捉え、確実に対応していきましょう。正しい知識と備えがあれば、不安を軽減し、納得のいく決断ができるはずです。

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