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不動産相続における借地権の扱いとは?基礎知識と手続きの流れ

不動産相続における借地権の扱いとは?基礎知識と手続きの流れ

不動産相続をした際、借地権が関わると何が違うのか?

親から受け継いだ自宅や土地を相続しようとしたとき、「実はその土地は借地だった」と気づくケースは珍しくありません。

借地権とは、他人の土地を借りて建物を所有している状態のことです。さらに、相続の際には通常の所有不動産とは異なる注意点があります。

たとえば、

  • 「地主への通知は必要?」
  • 「相続税の計算にどう影響する?」
  • 「名義変更ってどうするの?」

一般的な不動産相続に比べて手続きが複雑で判断に迷う場面が多いのが特徴です。

この記事では、

  • 借地権付きの不動産を相続する際に押さえておきたい基本知識
  • 税務上の扱い
  • トラブル回避のコツ
  • 専門家に相談すべきタイミング

までをわかりやすく解説します。

これから相続を控えている方、またはすでに手続きに入っている方も、ぜひ参考にしてください。

そもそも借地権とは?【相続の前に知るべき基本】

不動産相続の中でも、土地の権利関係が「借地」である場合には、通常の所有地と比べて複雑な手続きや注意点が発生します。

まずは借地権の基本をしっかり押さえておきましょう。そして、相続の場面で戸惑わないように注意しましょう。

借地権の定義と種類(普通借地権・定期借地権)

借地権とは、他人の土地を借りて建物を所有・利用する権利のことを指します。

建物を所有するために土地を借りる権利として、民法や借地借家法に基づいて定義されています。

借地権は、主に以下の2種類に分類されます。

  • 普通借地権
    • 建物の存続を目的として土地を借りる権利で更新によって長期間使用することが可能です。
    • 相続の場面ではそのまま相続人に引き継がれることが多いです。
    • 地主の承諾も原則として不要です。
  • 定期借地権
    • 一定期間(一般的には50年など)で契約が終了する借地権のことです。
    • 契約満了後には建物を取り壊して土地を返還する必要があります。
    • 相続しても残りの期間しか使えません。
    • 資産価値や利用計画に影響を与える可能性があります。

これらの違いを理解しておくだけでも、相続後の土地活用や相続税対策にも大きな差が生まれます。

所有権との違いと、借地権の評価が相続に与える影響

借地権は土地そのものの「所有権」ではありません。使用するための「権利」である点が大きな違いです。

そのため、相続財産としての評価額も異なり、所有権と比べて通常は評価額が低くなる傾向にあります。

たとえば、借地権付きの建物を相続する場合、建物自体は被相続人の財産です。しかし、土地については「借地権の経済的価値」が相続財産となります。

一般的には、土地の所有権評価額に借地権割合(地域ごとに国税庁が定める割合)を掛けた金額で評価されます。

このように、借地権は所有権よりも評価額が抑えられやすく、相続税が軽減される可能性があります。

また、一方で、地主との関係性や契約条件によってはトラブルの原因にもなりかねません。

評価額が相続税額に大きな影響を与えるため、事前に正確な情報を収集し、専門家に確認することが重要です。

不動産相続で借地権があるときの進め方【手続き編】

借地権付きの不動産を相続する場合、通常の不動産相続とは異なる手続きや配慮が必要です。

借地権は「財産」であると同時に、「第三者(地主)との契約に基づく権利」でもあるため、相続人は慎重に進める必要があります。

このセクションでは、借地権相続の基本的な手続きの流れと注意点を解説します。

借地権も財産として相続できる

借地権は、民法上の「財産権」として認められています。そして、被相続人の死亡により法定相続人へ当然に相続されます。

相続するにあたり、特別な手続きは必要ありません。他の財産と同様に遺産分割協議の対象になります。

たとえば、借地権付きの家を相続する場合、その借地権は建物とセットで評価され、相続財産として扱われます。

さらに、相続人の間で協議して誰がその建物と借地権を引き継ぐのかを決めたうえで、登記や名義変更等の手続きに進む必要があります。

ただし、借地権の契約内容や地主との関係性によっては、注意すべき点が出てくるため、次項から順に確認していきましょう。

名義変更・登記はどうすればいい?

借地権付き建物を相続した場合、主に以下の2つの名義変更が必要となります。

  1. 建物の所有権移転登記(相続登記)
  2. 借地契約に関する名義変更

建物については、相続人が法務局で「相続登記」を行い、所有者としての名義変更を完了させます。これは2024年4月以降、相続登記が義務化されたことにより、相続から3年以内に行わなければなりません。もしも、名義変更を怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。

一方で、借地契約の名義変更については、契約書の内容や地主の方針によって手続きが異なります。

多くの場合、地主の承諾を得たうえで、借地契約書を新たに作成・変更することになります。

これを怠ると、後々の更新や建て替え時にトラブルに発展することもあるため、確実に手続きを行いましょう。

地主への通知・承諾が必要なケースとその注意点

借地権の相続にあたって、地主への通知や承諾が必要となるケースが存在します。一般的には以下のような場合に当てはまります。

  • 建物を相続した相続人が第三者である場合
  • 相続人が建物を売却しようとする場合
  • 借地権の名義変更を伴う場合

法律上、借地権の相続自体に地主の承諾は不要です。しかし、慣習的に地主への報告や説明が求められる地域も多く、無断で進めると信頼関係を損なう恐れがあります。

特に、更新時のトラブルや建て替え承諾に影響する可能性もあるため、地主に対しては誠意ある対応が不可欠です。

通知の際には、内容証明郵便での連絡や、書面での確認を残すことが望ましいとされています。これにより、今後のトラブル防止にも役立ちます。

借地権に関する相続税の考え方【税金・評価額編】

借地権付きの不動産を相続する場合、「どのくらいの税金がかかるのか?」という点は非常に重要です。

これは、土地の所有権とは異なり、特殊な権利として評価されるため、相続税の計算にも独自のルールがあります。

このセクションでは、

  • 借地権の相続における税金の考え方
  • 評価額を適正に見積もるためのポイント

これらをを詳しく解説していきます。

借地権の評価方法と「借地権割合」

借地権の相続税評価額は、土地の自用地評価額 × 借地権割合 で計算されます。

たとえば、自用地評価額が5,000万円で、借地権割合が60%の地域の場合、借地権の評価額は
5,000万円 × 0.6 = 3,000万円 になります。

この「借地権割合」は、国税庁が地域ごとに定めているもので、路線価図や倍率表に記載されています。これは地域によって異なります。例えば、50%程度のところもあれば、70%やそれ以上の高い割合が設定されているところもあるのです。

また、相続税評価では、「借地権の経済的価値」を重視するため、実勢価格とは異なるケースが多くあります。特に、評価が高くなりすぎると課税負担が重くなるため、適切な計算と確認が不可欠です。

小規模宅地等の特例が使えるケース

借地権付きの建物でも、一定の要件を満たせば「小規模宅地等の特例」を利用して評価額を大幅に減らすことが可能です。

たとえば、次のような条件が整っていれば、借地権評価にかかる土地の部分について最大80%の評価減が認められます。

  • 相続人が被相続人と同居していた
  • 相続人がその家に住み続ける意思がある
  • 相続開始時に「居住用の宅地」として使われていた

この特例を適用することで、課税対象額が数百万円〜数千万円単位で軽減されることもあります。ただし、適用条件を一つでも満たしていないと特例が無効になります。そのため事前の確認が重要になってきます。

★関連記事:小規模宅地等の特例 | 不動産相続で相続税を最大80%軽減する方法について

評価額が高すぎて損をしないために

借地権はその評価が難しく、過大評価による課税リスクが少なくありません。評価を適切に行うためには、次のような点に注意しましょう。

  • 路線価や借地権割合は最新のデータを用いる
  • 実際の契約内容(地代・更新料・契約年数)を反映させる
  • 不整形地、接道状況、建築制限などによる補正要因を確認する
  • 相続開始時点での使用状況(空家・賃貸・自宅等)を考慮する

加えて、税理士や不動産鑑定士に評価を依頼することで、税務署との見解のズレを防ぐことができます。特に、地主との関係が複雑だったり、借地契約が古い場合は、専門家の知見が大きな助けとなるでしょう。

共有相続や放置で発生するリスクとは?【トラブル事例と回避策】

借地権付き不動産の相続では、複数人での共有や名義変更の放置が、思わぬトラブルの引き金となるケースが多く見られます。また、地主との信頼関係の悪化も、後々の地代や契約更新、借地権の譲渡・売却などに大きな影響を及ぼします。

ここでは、よくあるトラブルの事例と、それを回避するための対策について解説します。

借地権の共有はトラブルの元になる

借地権を兄弟姉妹など複数人で共有相続する場合、以下のような問題が生じやすくなります:

  • 一人が土地を使用していても、他の相続人が同意しないと建て替え・売却できない
  • 地主との契約更新や地代交渉に誰が対応するかで揉める
  • 一部の相続人と連絡が取れなくなり、手続きが進まなくなる

とくに建物を取り壊して売却するような場合、「全員の同意」が必要になります。しかし、話し合いが長引いた結果、不動産の価値が下がってしまうといった事態も起こり得ます。

このような問題の回避策としては、相続時に共有ではなく単独相続にして持分を金銭で調整することや、あらかじめ分割協議書で明確な取り決めを行うことが有効です。

名義変更を怠るとどうなるか(相続登記義務化の影響)

2024年4月から、相続による不動産の取得に関して登記申請が義務化されました。借地権も不動産に準ずる財産であり、名義変更を怠ると以下のリスクがあります。

  • 10万円以下の過料(罰金)が科される可能性
  • 不動産の売却・賃貸・融資の際に手続きが進まない
  • 将来的な相続(二次相続)でさらに複雑化

たとえば、祖父の代から相続登記がされておらず、相続人が10人以上に増えてしまったケースでは、登記や契約更新に多大な手間と費用がかかります。

このような事態を避けるためにも、相続が発生したら速やかに名義変更と登記申請を行うことが重要です。

地主との信頼関係も資産価値を左右する

借地権は地主との契約に基づく「借りている権利」であり、地主との関係が良好かどうかは、資産価値や今後の利用に大きな影響を与えます。

  • 地主が承諾してくれないと建物の建て替えや譲渡が困難になる
  • 更新料や地代の増額をめぐって関係が悪化する
  • 信頼関係がなければ、底地の買い取り交渉も不利になる

相続を機に、地主との関係が途切れてしまうこともあります。しかし今後の関係を良好にするためにも名義変更後にはあらためて挨拶をしながら、今後の付き合い方を確認しておくとよいでしょう。

また、地主との契約内容によっては、借地権の取り扱いが制限されていることもあります。そのため、契約書の確認や専門家への相談も重要なステップです。

専門家に相談すべきタイミングとメリット

借地権が絡む不動産相続は、一般的な相続よりも手続きや判断が複雑になる傾向があります。名義変更や税金の申告、地主とのやり取りまでをスムーズに進めるためには、専門家への早めの相談が非常に重要です。

ここでは、それぞれの専門家の役割と、相続前から準備を始めることのメリットについて解説します。

司法書士・税理士・弁護士、それぞれの役割

不動産相続には、複数の分野にまたがる知識が必要です。それぞれの専門家がどのような場面で力を発揮するかを把握しておくと、状況に応じた相談先を選びやすくなります。

司法書士

  • 借地権付き建物の名義変更登記
  • 相続関係説明図や遺産分割協議書の作成支援
    ⇒ 相続登記義務化により、相談ニーズが急増中

税理士

  • 借地権の相続税評価額の計算
  • 小規模宅地等の特例など、節税プランの立案
    ⇒ 評価額や控除の扱いを誤ると、過大な課税リスクが生じる

弁護士

  • 相続人間で意見が食い違った場合の紛争対応
  • 地主との契約や交渉での法的アドバイス
    ⇒ 共有トラブルや合意形成が困難なケースで強力な味方に

相続前からの準備で、トラブルも税負担も最小限に

「相続が発生してから考える」では遅いケースもあります。

特に借地権の場合は、以下のような事前準備が有効です。

  • 契約書の有無や内容を確認しておく(借地条件・期限・更新条項など)
  • 地主との関係を再確認し、相続後の意向や承諾の可能性を探っておく
  • 借地権の評価額を試算し、相続税への影響をシミュレーション
  • 誰が相続するかの意思表示を、家族間で共有しておく

こうした準備をしておくことで、名義変更や地主との手続きがスムーズに進むことでしょう。その結果、相続税も最小限に抑えられる可能性が高まります。

不動産や借地に詳しい専門家の力を借りることで、将来のトラブル回避と節税の両立が実現します。

借地権のある不動産相続は「正しい知識と事前準備」が決め手

借地権付きの不動産相続は、通常の相続よりも複雑で、注意すべきポイントが多く存在します。

地主との信頼関係、名義変更の手続き、借地権の税務評価など、どれか一つを見落とすだけで大きな損失につながる可能性もあります。

特に、2024年から施行された相続登記の義務化により、放置は大きなリスクとなりました。だからこそ、相続が発生する前から準備を進めることが重要です。

司法書士・税理士・弁護士といった専門家の力を借りることで、煩雑な手続きもスムーズに進み、トラブルや課税リスクを回避できます。

不安や疑問は抱え込まず、「正しい知識」と「信頼できる専門家」とともに、円満かつ有利な相続を実現しましょう。

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